現代のビジネスにおいて、顧客から選ばれるための戦略は不可欠です。ソーシャルメディアプラットフォームの拡大により、近年ではテレアポなどの従来の営業手法から、顧客から問い合わせてもらう「インバウンド営業」が注目を集めています。
この記事では、インバウンド営業の基礎知識から、具体的な手法やプロセス、メリットや成功のコツを解説します。
さらに、インバウンド営業に向いている業界など、実践的な情報もご紹介します。
※Web営業についての詳細は「Web営業とは?Web集客の戦略方法を解説!」をご覧ください。
インバウンド営業とは
インバウンド営業とは、顧客から問い合わせてもらう、つまり「見込み顧客」を「顧客」へと育成する営業手法です。
Webサイトやブログ、SNSなどを通して有益な情報を発信することで、自社商品やサービスへの興味・関心を引き出すと共に理解を深めてもらうことで、購買意欲を高めることができます。
インバウンド営業のメリット
インバウンド営業には、様々なメリットがあります。主なメリットは以下の通りです。
メリット | 詳細 |
効率的な営業活動 | 購買意欲の高い顧客にアプローチできるため、営業活動の効率化につながります。 |
コスト削減 | 従来の営業活動に比べて、広告費や人件費などのコスト削減が見込めます。 |
顧客との良好な関係構築 | 顧客のニーズに合わせた情報提供を行うことで、顧客との良好な関係を築きやすくなります。 |
ブランドイメージの向上 | 有益な情報を発信することで、企業の専門性や信頼性を高め、ブランドイメージを向上させます。 |
中長期的な売り上げの向上 | 顧客との信頼関係を構築することで、リピーターの獲得や口コミによる拡散効果が期待でき、中長期的な売り上げの向上につながります。 |
インバウンド営業のデメリット
メリットが多い反面、インバウンド営業にはデメリットも存在します。主なデメリットは以下の通りです。
デメリット | 詳細 |
効果が出るまでに時間がかかる | コンテンツ作成やSEO対策など、効果が出るまでに時間を要します。 |
継続的な努力が必要 | 効果を維持・向上させるためには、継続的なコンテンツ作成や情報発信が必要です。 |
専門知識が必要 | WebマーケティングやSEOに関する専門知識が必要となる場合があります。 |
効果測定が難しい | 施策の効果を正確に測定することが難しい場合があります。 |
メリットと共に、これらのデメリットを理解した上で、自社に合った戦略を立てるようにしましょう。
アウトバウンド営業との違い
アウトバウンド営業とインバウンド営業の大きな違いは、顧客へのアプローチ方法にあります。
アウトバウンド営業は、営業担当者が一方的に顧客にアプローチする「プッシュ型営業」であるのに対し、インバウンド営業は、顧客が自ら情報を探し、企業に接触してくるのを待つ「プル型営業」です。
この違いを理解することで、それぞれの営業手法の特徴を把握し、自社に最適な戦略を立てることができます。
※「アウトバウンド営業」について詳しく知りたい方は「アウトバウンド営業とは?インバウンド営業の違いと成功のコツ」をご覧ください。
インバウンド営業のプロセス
一般的なインバウンド営業のプロセスは、大きく分けて以下の4つの段階で構成されます。
段階 | 内容 |
集客 | ターゲットとなる顧客をWebサイトやブログ、SNSなどに集める |
育成 | 集めた顧客に対して有益な情報を継続的に提供し、購買意欲を高める |
見込み顧客化 | 資料請求や問い合わせなど、具体的なアクションを起こした顧客を見込み顧客として選別する |
顧客化 | 見込み顧客に対して適切なアプローチを行い、成約に繋げる |
インバウンド営業の手法

ここでは、代表的なインバウンド営業の手法とポイントをいくつかご紹介します。
ブログ・SNS
ブログやSNSを活用して有益な情報を発信し、潜在顧客との接点を増やすことができます。質の高いコンテンツを継続的に提供することで、企業やブランドへの信頼感や購買意欲を高める効果が期待できます。
ブログ
ブログでは、業界のトレンドや専門的な知識など、“顧客の課題解決に役立つ情報”を発信することで、潜在顧客の興味関心を惹き付けるようにします。
そのため、読者の共感を呼ぶようなストーリー性のあるコンテンツや、検索キーワードを意識したSEO対策も重要です。
例えば、SEO対策に役立つツールを紹介する記事や、特定の業界の課題解決に特化したブログ記事などが挙げられます。アクセス解析ツールを活用し、効果測定と改善を繰り返すことで、より効果的なブログ運営を実現することができます。
※コンテンツSEOについて詳しく知りたい方は「コンテンツSEOとテクニカルSEOの具体的な活用事例を紹介!」をご覧ください。
※アクセス解析ツールの詳細は「アクセス解析でSEO対策!成果を出すための基礎知識と解析ツールの種類を紹介」をご覧ください。
SNS
Facebook、Twitter、Instagram、LinkedInなど、様々なSNSプラットフォームを活用することで、幅広い層の潜在顧客にアプローチすることができます。各プラットフォームの特性を理解し、ターゲット層に合わせた情報発信を行う必要があります。
例えば、Facebookでは企業の活動内容やイベント情報を発信し、Twitterではリアルタイムな情報発信や顧客との双方向コミュニケーションを図り、Instagramではビジュアルコンテンツでブランドイメージを高めるといった使い分けを行うと効果的です。
ウェビナー
ウェビナーは、オンラインセミナー形式で、特定のテーマに関する情報を提供する手法です。参加者とリアルタイムで質疑応答を行うことで、顧客の理解を深め、購買意欲を高めることができます。ウェビナーのテーマ設定は、顧客のニーズや業界のトレンドを考慮することが重要です。
例えば、製品の使い方や導入事例、業界の最新動向などをテーマにしたウェビナーは、顧客にとって有益な情報源となります。
また、ウェビナー終了後に録画した動画を配信することで、参加できなかった潜在顧客へアプローチすることも可能です。
ホワイトペーパー
ホワイトペーパーは、特定のテーマに関する専門的な知識や情報をまとめた資料です。顧客の課題解決に役立つ情報を提供することで、企業の専門性をアピールし、信頼感を高めることができます。
ホワイトペーパーの内容は、顧客のニーズや業界のトレンドを踏まえ、データや事例を交えて構成することが重要です。
例えば、業界の市場動向分析レポートや、特定の課題に対する解決策をまとめたホワイトペーパーなどは、顧客にとって価値のある情報源となるため、ダウンロード形式にすることでリードナーチャリングにも活用できます。
インバウンド営業に向いている業界5選
インバウンド営業は、業界の特性や顧客の購買行動によって効果は大きく左右されます。
ここでは、特にインバウンド営業との相性が良いと考えられる5つの業界を具体例を交えながら解説します。
IT・ソフトウェア業界
IT・ソフトウェア業界は、複雑な製品・サービスが多いため、顧客は情報収集に時間をかけ、比較検討を綿密に行う傾向があります。
顧客の理解を深め、購買意欲を高めるためには、ブログやホワイトペーパー、ウェビナーなどを通じて、製品・サービスの価値や導入するメリット、活用事例などを詳しく解説すると良いでしょう。
例えば、SaaS型のマーケティングオートメーションツールを提供する企業の場合、導入事例や機能解説の記事、ROI(投資利益率)向上のためのTips(コツ・ヒント)などを掲載したブログを運営することで、リード獲得につなげることが期待できます。
BtoB向けサービス業
BtoB向けのサービス業も、顧客との長期的な関係構築が重要となるため、インバウンド営業との相性が良い業界です。
コンサルティング、人事、会計、法律など、専門性の高いサービスを提供する企業は、専門家としての信頼感を高めるために、顧客の抱える課題やニーズに合わせたコンテンツを作成してオウンドメディアで発信することで、リードナーチャリングにつなげることができます。
例えば、人事コンサルティング会社であれば、採用戦略や組織開発に関するノウハウを提供するブログやウェビナーを開催して見込み顧客との接点を増やすことで、より良い関係性を築くことができるでしょう。
メディア・コンテンツ業界
メディア・コンテンツ業界では、質の高いコンテンツがビジネスの根幹となります。そのため、自社で制作するコンテンツ自体がインバウンド営業のツールとなります。
ニュースサイトや動画配信サービス、オンライン学習プラットフォームであれば、SEO対策を施した記事や動画、無料トライアルなどを提供してオーガニック検索からの流入を増やし、顧客の獲得を目指してみましょう。
例えば、オンライン英会話スクールなら、英語学習に関する役立つ情報を発信するブログを運営することで、潜在顧客へのリーチを広げ、無料体験レッスンへの登録を促進することができるでしょう。
EC・D2C業界
D2Cは「Directo to Consumer」の略称で、商品やサービスを自社で運営するECサイト上で販売するものに対し、ECは「Electronic Commerce」の略称で、販売する場所や販売形態は問わず、オンライン上で売買や決済ができる電子商取引を意味します。
EC・D2C業界では、顧客との接点がオンラインに限定されるため、インバウンド営業の重要性が高まります。商品の特徴や使い方、顧客レビューなどを掲載したブログやSNS、動画コンテンツなどを活用することで、顧客の購買意欲を高め、コンバージョンにつなげることができます。
例えば、化粧品D2Cブランドは、商品の成分や効果、使用方法などを詳しく解説したブログやInstagramの投稿を通じて、顧客とのエンゲージメントを高め、購買を促進する手法がよく見受けられます。
顧客体験の向上に繋げる施策として、顧客に合わせた適切なコミュニケーションや情報の提供など、CX(顧客体験)を意識することも重要です。
旅行・観光業
旅行・観光業では、観光地の見どころやおすすめスポット、モデルコース、旅行プランなどを紹介するブログや動画など、魅力的なコンテンツが顧客の旅行意欲を掻き立てることができます。SNSなどを活用し、顧客の旅行計画をサポートすることで予約につなげましょう。
例えば、地方自治体であれば、地域の魅力を発信する観光情報サイトを運営して観光客誘致につなげる、旅行会社なら、旅行プランの提案や予約の受け付けを行うWebサイトに加えて、旅行に役立つ情報を提供するブログを運営し、顧客との接点を増やすことで予約率の向上につなげるなどが考えられます。
このように、インバウンド営業に向いている業種はたくさんありますが、中でも特に 高単価な商品・サービスを扱う業界 や 顧客が情報収集を重視する業界 に適していると言えます。より効果的な営業活動を行うためには、企業ごとに手法を最適化する必要があります。
インバウンド営業成功のコツ
インバウンド営業で成果を上げるには、戦略的なアプローチが不可欠です。ここでは、成功の鍵となる4つのコツを解説します。
質の高いコンテンツを提供
インバウンド営業の根幹は、顧客にとって価値のあるコンテンツを提供することです。顧客のニーズや課題を的確に捉え、役立つ情報を提供することで、見込み顧客の獲得し、育成していくことができます。
そのためにも、多様な形式のコンテンツを活用し、顧客が購買するプロセスをサポートしましょう。また、SEO対策を施し、検索エンジンからの流入を増やすことも重要です。
例えば、顧客の検索キーワードを分析して関連性の高いキーワードをコンテンツに盛り込んだり、コンテンツの質を高めるために専門家による監修やインタビュー、データに基づいた分析結果を盛り込んだりするのも良いでしょう。
※コンテンツマーケティングについて詳しく知りたい方は「BtoB企業向けのコンテンツマーケティング|種類と事例」をご覧ください。
顧客の行動データを分析・適切なアプローチ
Webサイトへのアクセス状況や資料ダウンロード履歴など、顧客の行動データを分析することで、顧客の興味関心や購買意欲を把握することができます。
特定の製品ページを何度も閲覧している顧客には、その製品に関する詳細な資料やデモ動画へのアクセスを促すメールを送信するなど、パーソナライズされたアプローチが効果的です。
また、顧客の行動データに基づいて、Webサイトの改善やコンテンツの最適化を行うことで、コンバージョン率(CVR)の向上に繋げることができます。データ分析に基づいた顧客理解を深めることで、より効果的なインバウンド営業を実現できるでしょう。
※アクセス解析について詳しく知りたい方は「アクセス解析でSEO対策!成果を出すための基礎知識と解析ツールの種類を紹介」をご覧ください。
CVRまでの動線の最適化
顧客がWebサイトを訪れてから問い合わせや購入に至るまでの導線を最適化することで、CVRの向上を図ることができます。
具体的には、問い合わせフォームの入力項目を簡素化したり、CTAボタンを目立つように配置したりするなど、ユーザーエクスペリエンスを向上させるための工夫が重要です。
また、LPを最適化することで、特定のキーワードで検索してきたユーザーを効率的にコンバージョンに導くことができます。A/Bテストを実施し、効果的な導線を検証することも有効です。Webサイト全体の導線をスムーズにすることで、顧客の離脱を防ぎ、コンバージョンへと繋げましょう。
※デザイン設計について詳しく知りたい方は「UI/UXとは?違いやデザイン(設計)のポイントをわかりやすく解説」をご覧ください。
※LPについて詳しく知りたい方は「LPの制作ポイントと外注するメリット・デメリット」をご覧ください。
チームの連携
インバウンド営業を成功させるためには、マーケティング部門と営業部門の連携が不可欠です。両部門が密にコミュニケーションを取り、情報共有をスムーズに行うことで、リードナーチャリングの効率化や顧客の対応を向上させることに繋げることができます。
例えば、マーケティング部門が獲得したリード情報を営業部門に引き継ぎ、営業部門は顧客のニーズに合わせた提案を行うことで、成約率を高めることができるでしょう。
まとめ
この記事では、インバウンド営業のメリット・デメリット、アウトバウンド営業との違い、そして向いている業界と成功のコツを解説しました。インバウンド営業の最大のメリットは、質の高い見込み顧客を獲得できることです。一方で、成果までのコストや継続的な運用努力が必要となる点がデメリットと言えます。
また、能動的な営業である「アウトバウンド営業」と組み合わせることで、より効率的に新規顧客を獲得できる可能性も広がります。
東京都吉祥寺を拠点とするWeb制作・Webマーケティング会社「シンギ」では、インバウンド営業に活用できるコンテンツマーケティングやSEO対策等を含む「定額Web運用サービス」を行なっております。
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