
ABMとは何かをやさしく解説
ABMとは「アカウントベースドマーケティング」の略で、日本語では「アカウント(企業)単位でのマーケティング」と訳されます。
従来のマーケティングが不特定多数のリード(見込み顧客)を対象としていたのに対し、ABMはあらかじめ定めた特定のターゲット企業に対して、ピンポイントでアプローチを行う戦略です。
例えば、BtoBビジネスにおいては、製品やサービスが特定の業種や規模の企業に向いている場合が多くあります。その際、無差別に広告を出したりメルマガを配信したりしてもリードの質が低くなりがちです。
ABMでは、あらかじめ「この企業と取引したい」という候補を選び、その企業に対して個別最適化されたメッセージやコンテンツを展開していきます。
この手法は、営業とマーケティングが密に連携しながら進めていくことが特徴です。
営業部門が持つターゲット企業の情報と、マーケティング部門が持つデジタル施策を組み合わせて、最適なタイミングで適切な情報を届けることができます。
従来の一斉配信型マーケティングとは異なり、「誰に届けるか」を軸に戦略を組み立てる点がABMの特長です。

なぜ今ABMツールが注目されているのか
ABMが注目される背景には、デジタルマーケティング環境の変化があります。
近年、Cookie規制や個人情報保護の強化によって、従来のターゲティング広告の精度が低下してきました。
また、多くの企業がデジタルチャネルに投資を重ね、結果としてWeb上の情報過多が進んでいます。このような状況下では、不特定多数へのマーケティングでは成果が出にくくなっているのが現状です。
その一方で、ABMでは企業単位でのデータを活用し、対象となる企業のWeb閲覧履歴や行動パターンをもとに精度の高いコミュニケーションが可能になります。
特にABMツールを使えば、どの企業が自社サイトにアクセスしているのかを把握したり、その企業がどの製品ページを見ているかといった情報を可視化したりすることができます。こうしたデータをもとに、営業部門がアプローチを行えば、成約率を高めやすくなるのです。
さらに、ABMは「限られたリソースで最大の効果を生み出す」ことが求められる中小企業にとっても、有効な戦略であると評価されています。無駄な広告費を削減し、最も可能性の高い企業に集中してリソースを投下できるため、効率的な営業活動が実現できます。
ABMツールを使うと何ができるのか
ABMツールは、ターゲット企業の選定からアプローチ、成果分析に至るまで、一連のプロセスを支援する機能を備えています。
例えば、ABMツールを導入することで、自社サイトにアクセスしてきた企業を特定できるようになります。IPアドレスと企業データベースを照合すると、匿名だった訪問者が「どの会社か」を推定できるため、より精緻なアプローチが可能になります。
また、ABMツールには、ターゲット企業ごとに最適なコンテンツを出し分ける機能もあります。そのため、同じページでも閲覧者の企業によって表示内容を変えることができ、より高い関心を引き出す設計が可能となります。
さらに、メールマーケティング機能と連携すれば、特定の企業が特定のアクション(例:資料ダウンロード)を起こした際に、自動でフォローアップメールを送るといった対応もできます。
成果の可視化という面でも、ABMツールは大きな威力を発揮します。どの企業がどのタイミングで何を見たか、そこから営業がどう動いたかといった一連の流れをトラッキングし、レポートとして出力できます。
そのため、施策の振り返りがしやすくなり、PDCAサイクルを高速で回すことができるようになります。
※メールマーケティングについて詳しく知りたい方は「メールマーケティングとは?メリットや具体的な手法と流れをご紹介!」をご覧ください。
大企業が導入している主要なABMツールの特徴
現在、大企業で広く導入されているABMツールにはいくつかの代表的な製品があります。
例えば、米国発の「Demandbase」や「6sense」は、グローバル規模でのアカウントデータ統合とAIによる予測分析機能に強みを持っています。
また、日本国内では「FORCAS」や「ユーソナー」などの国産ツールが高い評価を得ています。
特に「FORCAS」は、日本企業のデータに特化しており、業界ごとの動向や企業の成長予測なども踏まえたターゲティングが可能です。
そのため、「今まさにこのサービスが必要とされている企業」を見極めやすくなり、営業活動の成果を高めることができます。
また、「ユーソナー」は膨大な企業データベースを活用し、自社と類似した企業を自動で抽出する機能があり、新たなターゲットの発掘に役立ちます。
以下の表は、主要ABMツールの特徴を比較したものです。
ツール名 | 提供企業 | 主な機能 | 特徴 |
FORCAS | ユーザベース | ターゲット企業抽出、スコアリング、営業連携 | 日本市場に特化、使いやすいUI |
ユーソナー | ユーソナー株式会社 | 企業データ統合、ABM分析 | 企業類似性判定で新規開拓に強い |
Demandbase | Demandbase Inc. | 広告配信、アカウント識別、AI分析 | グローバル対応、AIによる予測精度が高い |
6sense | 6sense Insights | インテントデータ、営業支援、分析 | 行動データから購入意欲を予測 |
中小企業こそABMツール活用で成果を出せる理由
ABMツールは大企業向けという印象を持たれがちですが、実は中小企業にこそ適している側面があります。最大の理由は、限られたリソースを有効に活用し、見込みの高い企業に集中してアプローチできる点です。
中小企業では、営業担当者の人数も限られており、効率的に成果を出すためには無駄のないターゲティングが不可欠です。
また、ABMツールを使えば、営業部門とマーケティング部門の情報共有がスムーズになります。特定の企業に対して、どのような行動を取っているのかを可視化できるため、部門間の連携が強化され、全社的な営業力の底上げにつながります。
例えば、Webサイトの閲覧履歴から興味関心を把握し、その情報をもとに営業が具体的な提案を行えば、商談化率を高めることが可能です。
さらに、SEOの視点から見ると、ABMは「質の高いトラフィック」を生み出す手法でもあります。対象企業に向けたコンテンツを設計することで、検索エンジンからも評価されやすくなり、間接的にSEO効果も期待できます。
つまり、ABMは営業戦略だけでなく、「Webマーケティング全体の質を高める起点」にもなり得るのです。
ABMツールを比較する際に見るべき5つのポイント
ABMツールを選定する際には、いくつかの観点から比較検討することが重要です。
まず第一に、「対象となる企業データの質と量」が挙げられます。
自社のターゲット層に合致する企業情報がどれほど網羅されているかが、ツールの実用性を左右するためです。
次に重要となるのが、「既存の営業・マーケティングツールとの連携性」です。
例えば、CRMやMAツールとスムーズにデータ連携ができるかどうかは、業務効率に直結します。APIの有無や連携の柔軟性も確認しておくとよいでしょう。
三つ目の視点は、「UI/UXの使いやすさ」です。
ABMツールは営業担当者が日常的に使用することになるため、直感的に操作できる設計であるかどうかは導入効果に大きく影響します。特にITリテラシーが高くない現場では、操作性の高さが成功の鍵を握ります。
さらに、「レポート機能や分析精度」も見逃せません。ABMは「仮説と検証の繰り返し」によって最適化されていくため、データに基づいた意思決定ができる環境が求められます。どの企業がどの段階にあるのかを一目で把握できるダッシュボードがあると、施策の見直しもスムーズに行えます。
最後に、「コストと導入サポート体制」もツールを比較する際のポイントです。中小企業ではコストパフォーマンスが重視されるため、初期費用や月額料金に加え、サポート内容(オンボーディング、トレーニングなど)も確認しておくことで、失敗のリスクを減らすことができます。
※CRMとMAツールについての詳細は、以下をご覧ください。
「マーケティングツールの種類一覧|目的別の比較表」
「MAツールとは?基礎知識と導入例|マーケティング施策の活用法」
初心者でも扱いやすいABMツールを紹介
導入ハードルの低いツールとは
ABMの概念は理解できても、実際にツールを導入しようとすると「難しそうだ」「専門知識が必要なのでは」といった不安を抱く方も少なくありません。
特にWebに詳しくない中小企業の担当者にとっては、操作性や用語のわかりやすさが導入判断の大きなポイントとなります。こうしたニーズに応えるABMツールには、操作画面が直感的で、ガイド機能やサポート体制が整っている製品が存在します。
代表的な初心者向けツールの特徴
国産のABMツールの中には、営業部門とマーケティング部門の連携を前提としたシンプルなUIを実現しているものがあります。
例えば、「FORCAS」は、日本市場に特化し、使いやすいUIという特徴があります。
CRMと連携し、顧客の行動履歴を自動で可視化してくれる機能があるため、Excelベースで管理していた企業にとっては非常に大きな業務効率化につながります。
また、ABMの初心者にとってありがたいのが、シナリオテンプレートやスコアリングの初期設定があらかじめ組まれている点です。
そのため「何をすればいいか分からない」と悩むことなく、すぐに活用を始めることができます。
中小企業が選ぶべき視点とは
大企業に比べてリソースが限られている中小企業では、まず「成果が見える」ツールを選ぶことが重要です。分析機能が豊富であっても、日常的に活用できなければ宝の持ち腐れとなってしまいます。
導入初期の段階では、機能が豊富すぎるよりも、必要最低限で運用しやすいものが適しています。
例えば、メール配信とWeb行動のトラッキング機能に絞ったABMツールであっても、適切なターゲット設定さえできていれば十分に成果を上げることができます。段階的に機能拡張できるツールを選ぶことで、成長に応じた使い方が可能になります。
費用対効果から見るABMツール導入の判断基準
ABMツールのコスト構造を理解する
ABMツールの導入を検討する際、多くの企業がまず気にするのが費用対効果です。特に中小企業では、限られた予算の中で最大限の効果を引き出す必要があります。
ABMツールには、「月額固定のサブスクリプション型」と、利用する機能やアカウント数に応じて課金される「従量課金型」があります。初期費用が抑えられるプランも多く、数万円から始められるものもあるため、導入ハードルは想像以上に低いといえます。
ROI(投資収益率)で見るべき指標
ABMツールの費用対効果を測る上で重要なのが、ROIの視点です。
例えば、ツール導入によって1件あたりの商談獲得コストがどれほど削減できたか、あるいはLTV(顧客生涯価値)がどれだけ向上したかといった定量的な指標をもとに判断します。
以下の表は、ABM導入前後の主要指標の変化を示した一例です。
指標 | 導入前 | 導入後 | 改善率 |
商談獲得単価 | 30,000円 | 18,000円 | -40% |
リード成約率 | 3.2% | 5.8% | +81% |
LTV(推定) | 150,000円 | 210,000円 | +40% |
このように、導入費用そのものだけでなく、どれだけの成果が得られるかを見極めることが重要です。
また、数値だけに依存せず、営業やマーケティング担当者の業務負荷が軽減されるなどの「見えにくい効果」も忘れてはなりません。
ABMツール導入後にやるべき運用ステップ
初期段階での準備と考え方
ツールを導入したからといって、すぐに成果が出るわけではありません。ABMの本質は「適切なターゲットに最適なタイミングで価値を届ける」ことにあります。
そのためには、最初に「ターゲットアカウントの選定」と「ペルソナの再定義」が必要です。これは営業現場の知見とマーケティング部門のデータを組み合わせることで、より実態に即したターゲティングが可能になります。
運用フェーズの基本的な流れ
運用の初期ステップは、まず顧客データの整備から始まります。
過去の営業履歴やWebサイト訪問履歴などを統合し、セグメントごとの行動傾向を分析します。
その上で、ターゲットアカウントごとに適したコンテンツやメール施策を設計します。ここでは、SEOライティングの知見が役立ちます。同じ商品説明であっても、検索意図を反映させた言い回しや、読者の課題を先回りして提示する構成にすることで、訴求力が格段に高まります。
次に行うのが「施策の実行」と「A/Bテスト」です。
コンテンツや配信タイミングを変えながら、どの施策が最も効果を上げるのかを検証します。ABMは一度の施策で完結するものではなく、PDCAサイクルを高速に回していくことが肝となります。
特に中小企業においては、定例ミーティングの中で施策の振り返りと改善案をセットで議論する体制を整えるだけでも、実行力が大きく変わってきます。

成功事例から学ぶABMツール活用のコツ
中小企業の実践例
ある地方のBtoB製造業では、営業リソースの限界を感じてABMツールを導入しました。当初は「使いこなせるか不安」という声もありましたが、週1回の簡易レポートを営業担当者と共有する仕組みを構築することで、徐々に活用が進みました。
中でも特にWeb行動履歴をもとにした「今、興味を持っている企業」を可視化する機能が評価され、営業のアプローチの精度が飛躍的に向上したのです。
大企業の手法を中小企業が応用する
ABMは元々、大企業が大口顧客に対して戦略的にアプローチするための手法として発展してきました。しかし、近年はその考え方を応用し、限られたリソースの中で効率良く成果を上げる中小企業の導入事例が増えています。
例えば、商談履歴が蓄積されたCRMとABMツールを連携させることで、営業担当者が次にアプローチすべき企業が自動的に可視化される仕組みを構築した事例があります。
こうした仕組み化により、「勘」や「経験」に頼っていた営業活動が、データに基づいた戦略的な行動へと進化しました。
SEO対策とABMツールの相乗効果とは
見込み客の興味を引きつけるコンテンツ戦略
ABMとSEOは、一見すると異なる領域の施策に見えますが、実は非常に高い相乗効果を発揮します。SEOで獲得した流入ユーザーの中から、ABMツールで特定の企業を抽出し、より深いナーチャリングへと進めることが可能です。
実際、SEOを意識した記事コンテンツを通じて見込み客の課題を先読みし、その解決策を提示することで、ABMのターゲット企業への関心を高める導線が生まれます。
また、コンテンツ制作の際には、「検索キーワードに含まれる意図」を読み取ることが大切です。
例えば、「製造業 DX 成功事例」と検索しているユーザーには、具体的な事例や導入効果の数値を提示する記事が効果的です。こうしたSEOライティングの観点をABMツールと組み合わせることで、単なる流入ではなく、質の高い見込み顧客の獲得につながります。
自社に合ったABMツールを選ぶためのチェックリスト
選定時に確認すべきポイント
ABMツールは多種多様であり、「どれを選べばいいのか分からない」と感じるのは当然のことです。そこで、自社に合ったツールを選ぶための視点として、いくつかの確認項目を持っておくと安心です。
まず第一に、自社の営業・マーケティング体制とツールの連携性を確認しましょう。CRMやMAとスムーズに連携できるかは、導入後の運用効率に大きく関わります。
操作性・サポート体制・スケーラビリティ
次に、操作画面が分かりやすいか、トレーニングやサポート体制が充実しているかも重要なポイントです。特にWebに不慣れな担当者が多い企業では、サポートの手厚さが定着に直結します。
また、将来的に機能拡張が可能かどうかもチェックしておくべきです。導入当初は必要最低限の機能で十分でも、ビジネスが成長するにつれて、より高度な分析や施策管理が求められる場面が出てきます。
最後に、自社の営業戦略や顧客層に合ったターゲティング機能が備わっているかも見逃せない要素です。テンプレートに頼りきるのではなく、自社の強みや方針に合致した柔軟な設定が可能なツールを選ぶことで、ABMの効果を最大限に引き出すことができます。
まとめ
ABMは、限られた営業・マーケティングリソースを最も効果的に活用できる手法として、いまや大企業だけでなく中小企業からも注目を集めています。
本記事では、ABMの基本からツール選定のポイントや導入・運用の実践ステップまでをわかりやすく解説しました。
特に中小企業にとっては、狙うべき企業に集中してアプローチできるABMの考え方が、営業効率や成約率の向上に直結することがおわかりいただけたかと思います。
とはいえ、実際の導入や運用には、ツール選定・設計・コンテンツ運用など、時間と専門知識が求められるのも事実です。
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