
よく耳にする「CX(カスタマーエクスペリエンス)」とは、実際どんな意味なのか、なぜ重要なのか、いまいち理解できていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。マーケティングや企業の差別化を図るものとして、「CX」の重要性が求められています。
この記事では、CXの定義から、UX・CSとの違い、重要性や向上させることで得られるメリットを解説すると共に、CX向上の具体的な事例や改善策も併せて紹介します。
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは、日本語で「顧客体験」を意味します。商品やサービスだけでなく、購入から使用、そしてアフターサポートに至るまで、顧客が企業と接するすべての過程を通して得られる体験のことを指します。
顧客が企業に対して抱く感情や印象もCXに含まれます。顧客満足度を高め、ロイヤルカスタマーの育成、ひいては企業の成長へと繋げるためには、良いCXを提供することが重要になります。
UXとの違い
CXと混同されやすいのが、UX(ユーザーエクスペリエンス)です。
UXは「ユーザー体験」を意味し、主に製品やサービス、Webサイトやアプリなどの利用時の使いやすさや満足度を指します。
CXは顧客の購買プロセス全体を包括するのに対し、UXはその一部である製品・サービスの利用体験に焦点を当てています。つまり、CXにはUXも含まれていると言えるでしょう。
例えば、あるECサイトで購入する場合、サイトの見やすさや操作性は「UX」に該当します。一方で配送の速さや正確さ、アフターサポートの対応などは「CX」に含まれます。UXが優れていても、配送が遅れたり、カスタマーサポートの対応が悪ければ、顧客は全体として悪いCXを受けたと感じるでしょう。CXとUXは、それぞれ単体で考えるものではなく、繋がっているのです。
※UXについて詳しく知りたい方は「UI/UXとは?違いやデザイン(設計)のポイントをわかりやすく解説」をご覧ください。
項目 | CX(カスタマーエクスペリエンス) | UX(ユーザーエクスペリエンス) |
範囲 | 顧客の購買プロセス全体 | 製品・サービスの利用体験 |
視点 | 顧客視点 | ユーザー視点 |
例 | Webサイト、実店舗、カスタマーサポート、広告、口コミなど | Webサイトの使いやすさ、アプリの操作性、商品の使い心地など |
CSとの違い
CS(カスタマーサティスファクション)も、CXと関連性の高いものです。
CSは、「顧客満足度」を意味し、製品やサービスを利用した結果、顧客がどれだけ満足したかを測る指標です。 一方、CXは顧客の購買プロセス全体に関わる体験を指します。
つまり、CSはCXの結果として得られる“満足度”を測る指標であり、CXの中にCSが含まれていると言えます。
例えば、あるECサイトで購入する場合、商品の到着後に「商品に満足したか」「サポート対応は丁寧だったか」などをアンケートで測るのがCSです。商品を探す過程から購入、配送、アフターサポートまでを含めた全体的な体験はCXに該当します。
CSだけが高くても、購買過程でストレスが多ければ良いCXとは言えません。CXとCSは単体で考えるのではなく、CXの中でCSをどう向上させるかが重要なのです。
項目 | CX(カスタマーエクスペリエンス) | CS(カスタマーサティスファクション) |
範囲 | 顧客の購買プロセス全体 | 顧客対応業務(主に購入後対応) |
視点 | 顧客視点が中心(体験全体の質を重視) | 顧客の満足度を数値で把握・改善(評価視点) |
例 | Webサイト、実店舗、カスタマーサポート、広告、口コミなど | 電話対応、メール対応、チャット対応、FAQなど |
このように、CXは、UXやCSを含む構想となっています。顧客視点で購買プロセスの全体を捉え、あらゆるタッチポイントを最適化することで、真に顧客中心のビジネスを実現することが可能になります。
なぜCXが重要視されているのか
CX(カスタマーエクスペリエンス)は、近年のビジネスにおいて非常に重要視されています。これは、従来の製品やサービス中心の考え方から、顧客中心の考え方へとビジネスモデルが変化していることが大きな要因です。
顧客一人ひとりのニーズが多様化・複雑化する現代において、企業は顧客との良好な関係を築いて維持していくことが欠かせなくなっており、多くの企業がCX向上に取り組んでいます。
また、インターネットやSNSの普及により、消費者は様々な情報に容易にアクセスできるようになりました。そのため、製品やサービスの価格だけでなく、購入前から購入後までのあらゆる体験価値が重視されるようになりました。
消費者は良いCXを提供してくれる企業を選び、そうでない企業からは離れていく傾向があるため、企業は顧客に選ばれ続けられるよう「CX向上」に注力する必要があるのです。
「顧客の変化」とCXの重要性
現代社会における顧客の変化は、CXの重要性をさらに高めています。主な変化として、以下の点が挙げられます。
主な変化 | 詳細 |
情報収集力の向上 | インターネットやSNSを通じて、製品やサービスに関する情報を容易に入手できるようになったため、消費者は購買前に様々な情報を得て比較検討を行うようになった。 |
口コミの影響力 | SNSなどで口コミが拡散しやすくなり、企業の評判は容易に広まるようになったことで、購買行動に大きな影響を与えるようになった。 |
パーソナライズへの期待 | 個々のニーズや好みに合わせたサービスへの期待が高まっている現代では、個性のない均一なサービスは顧客満足度を高めることが難しくなってきた。 |
これらの変化に対応するためには、顧客一人ひとりのニーズを的確に捉え、パーソナライズされた体験を提供することが重要になります。そのため、CX向上は、これらの変化に対応するための重要な戦略と言えるでしょう。
「競争激化」とCXの重要性
グローバル化やデジタル化の進展により、市場における競争は激化しています。多くの企業が類似した製品やサービスを提供する中で、価格競争だけでは生き残ることが難しくなってきていることは周知の事実です。
そこで、重要視されているのが、顧客との長期的な関係を構築し、他社との差別化を図ることができるCXです。優れたCXを提供することで、顧客ロイヤリティを高め、持続的なビジネスの成長が期待できます。
「デジタル化」とCXの重要性
CXを向上させ、競争優位性を築くためには、デジタル技術を効果的に活用することが欠かせません。
例えば、AIやビッグデータを活用して顧客の行動履歴や購買パターンを分析し、パーソナライズされたサービスを提供することができます。また、チャットボットやVRなどの技術を活用すれば、顧客とのコミュニケーションを強化し、より質の高いCXを提供することもできます。
このように、CXの向上には、デジタル技術の活用が新たな可能性を広げるために不可欠であると言えるでしょう。
時代 | 重視されるポイント |
過去 | 製品・サービスの品質、価格 |
現在 | 顧客体験(CX)、パーソナライズ、利便性 |
CXの重要性を高めている要因は、「顧客の変化」「競争の激化」「デジタル化の進展」といった様々な要因が絡み合っていることがお分かりになったかと思います。現代においては、企業はこれらの変化を理解すると共に、顧客中心の経営を実践していく必要があるでしょう。
CXの向上で得られるメリット5つ
CX向上は、企業にとって多くのメリットをもたらします。なぜなら、顧客視点を取り入れることで、ビジネスの成長を促進する様々な効果が期待できるからです。
以下のメリットを総合的に見ると、CX向上は企業の持続的な成長に欠かせない取り組みと言えるでしょう。顧客の満足度を高める「顧客中心の経営」を実践し、ビジネスの成功へと繋げていきましょう!
顧客ロイヤリティの向上
優れたCXは、期待を超える体験を提供することで、顧客は企業への信頼感を深め、継続的に利用するようになります。これは、安定した収益基盤を築くことに繋がります。
さらに、企業やブランドに高い信頼を抱いている顧客「ロイヤルカスタマー」が増えることにより、口コミやSNSでの情報発信を通じて、新たな顧客獲得にも貢献してくれる可能性があります。そのため、高い顧客ロイヤリティは、長期的なビジネスの成功に欠かせないものであると言えるでしょう。
ブランドイメージの向上
顧客は、良い体験をブランドと結びつけて記憶するため、一貫性のある質の高いCXを提供することで、「ここのブランドは良い」「このブランドを利用したい」といった、企業のブランドイメージの向上に繋がります。
ロイヤルカスタマーのポジティブなイメージは、新規顧客の獲得にも繋がるため、質の高いCXを提供することも重要なポイントです。
リピーター獲得
顧客が満足するCXを提供することは、リピーターの獲得に直結します。一度良い体験をした顧客は、再び同じ企業から商品やサービスを購入する可能性が高くなることは、実際に自身が購入体験を通して実感したという方も多いのではないでしょうか。
リピーターは、新規顧客獲得に比べてコストが抑えられるため、収益性を高める上で重要な役割を果たします。また、リピーターからのフィードバックは、更なるCX向上に繋がる貴重な情報源にもなるでしょう。
競合との差別化
現代の市場においては、製品やサービスの機能だけで差別化を図るのは難しくなってきています。そこで、CXが重要な差別化要因となります。顧客のニーズに応え、他社にはない独自の体験を提供することができれば、競争優位性を築き、市場での存在感を高めることができるようになるでしょう。
例えば、きめ細やかなカスタマーサポートやパーソナライズされたサービスなどは、顧客にとって大きな付加価値となり、他社との差別化に繋がります。
既存顧客による宣伝効果
優れたCXは、ロイヤルカスタマーなどの既存顧客による口コミやSNSでの拡散といった宣伝効果を生み出すことが期待できます。ソーシャルメディアの普及により、個人の発信力はかつてないほど高まっており、ポジティブな口コミは大きな影響力を持つようになりました。
感動的な顧客体験は、顧客が自発的に情報を発信する動機となり、企業にとって費用対効果の高いマーケティング活動にもなるのです。
CXを改善させる取り組み・ポイント6つ
CXを向上させるためには、顧客の行動や心理を理解し、それぞれの段階で最適な体験を提供する必要があります。それが結果的に顧客の満足度に繋がり、持続的な関係を築くことになります。
ここでは、CXを改善するための具体的なポイントを解説します。
顧客理解を深める
CX向上のためには、まず顧客を深く理解することが重要です。顧客のニーズ、行動、心理を把握し、顧客にとって真に価値ある体験を提供していきましょう。
具体的な方法:顧客アンケートの実施や顧客インタビュー、Webサイトのアクセスログ分析、SNSでの評判調査など。ECサイトのアクセスログを分析し、商品ページの動線が悪い箇所があれば改善する。
顧客接点を最適化する
顧客接点とは、顧客が企業と接触するあらゆるポイントを指します。これらを最適化することで顧客体験の向上に繋がります。
具体的な方法:顧客との接点であるWebサイト、実店舗、電話、メール、SNSなどの満足度を上げる。例えば、Webサイトにチャットサポートを導入し、顧客がその場で質問できる環境を整備して、問い合わせ対応がスムーズにする。
データに基づいたCX改善
継続的なCX向上を実現するためには、様々な顧客データの分析は、CX改善に欠かせません。
具体的な方法:Webサイトのアクセスログ、顧客アンケートの結果、顧客からの問い合わせ内容など、アクセス解析ツールやCRMツールなどを活用し、データに基づいたPDCAサイクルを回す。例えば、ECサイトでアクセスログを分析して、離脱原因となっていた入力フォームを簡略化する。
※アクセス解析ツールについて詳しく知りたい方は「アクセス解析でSEO対策!成果を出すための基礎知識と解析ツールの種類を紹介」をご覧ください。
オムニチャネル戦略
オムニチャネルとは、複数のチャネルを統合し、顧客にシームレスな購買体験を提供することです。
具体的な方法:オムニチャネル戦略を行うことで、実店舗、ECサイト、SNS、アプリなど、一貫した情報やサービスを受けられるようにすることで顧客満足度を高める。例えば、実店舗とECサイトの在庫情報を連携し、オンラインで商品を取り置き・店舗で受け取りできる仕組みを導入する。
パーソナライゼーション
パーソナライゼーションとは、顧客一人ひとりのニーズや好みに合わせたサービスを提供することです。
具体的な方法:Webサイトの閲覧履歴や購買履歴に基づいて、おすすめ商品を表示したり個別のクーポンを配信したりすることで、顧客体験を向上させる。
継続的な改善
CX向上は、一度の取り組みで完了するものではありません。顧客のニーズや行動は常に変化するため、継続的に顧客の声を収集し、改善策を検討していく必要があります。
具体的な方法:定期的な顧客アンケートの実施や顧客フィードバックシステムの構築などを通じて、顧客の声を積極的に取り入れ改善に繋げていく。例えば「問い合わせ対応が遅い」という声があればサポート体制を強化するなど。
CX向上の成功事例
ここでは、CXを向上させる具体的な事例を紹介します。参考にしてみてください。
「モバイルアプリを活用した事前注文・決済の導入」でCX向上!
導入前 | 店舗での待ち時間が長く、レジ対応が混雑しやすいことが課題でした。その結果、スタッフの負担が増え、顧客も注文時にストレスを感じやすい状況に。 |
取り組み内容 | 専用アプリで商品の注文・カスタマイズ・支払いを事前に完了できる仕組みを導入!来店時には商品を受け取るだけで済むように設計しました。 |
導入後 | 待ち時間やレジの手間が削減され、スムーズな購買体験を提供できるようになり、顧客満足度・リピート率の向上の成功に繋がりました。 |
「カスタマイズ対応の柔軟化」で顧客との信頼関係を構築
導入前 | 製品・サービスが画一的で、顧客ごとの細かなニーズや要望に十分対応できていないことが課題でした。製品・サービス利用後のフォローや改善提案も不足し、顧客が自社に合った仕様ではないと感じる場面が増えてしまったことが悩みでした。 |
取り組み内容 | 顧客ごとの課題やニーズに合わせた製品・サービスのカスタマイズ対応を標準化することに。顧客ごとの課題ヒアリングを徹底し、導入後もアップデートや改善提案を定期的に実施しました。 |
導入後 | 顧客が自社専用仕様の製品・サービスが使える安心感が得られるようになったことで、長期的な取引・信頼関係を構築することに成功しました。 |
「顧客専用ポータルサイトの導入」でCXも業務効率もアップ!
導入前 | 発注履歴や見積依頼、問い合わせ履歴などの情報が各所に分散し、管理が煩雑になっていました。そのため、必要な情報を得るために営業担当者に連絡が必要で、対応に時間と手間がかかっていたことが課題でした。 |
取り組み内容 | 法人顧客ごとにログインできる専用ポータルサイトを開設し、発注履歴、見積もり依頼、問い合わせ履歴などが1ヶ所で確認・管理ができる仕組みを整備しました。 |
導入後 | 必要情報を迅速に確認したり手続きしたりすることが可能となり、営業担当者に都度連絡しなくても自己完結できるため、業務効率がアップ!顧客満足度も向上しました。 |
まとめ
この記事では、CX(カスタマーエクスペリエンス)とは何か、なぜ現代ビジネスにおいて重要視されているのかなどについて解説しました。CX向上は、企業の成長に大きく貢献するため、顧客の行動や心理を理解することが重要になります。顧客のニーズを理解するにはアクセス解析ツールなどを活用して分析し、理解を深めていくようにしましょう。
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