
BtoBビジネスにおける顧客獲得にお悩みではありませんか?顧客の行動を理解し、効果的なマーケティング戦略を立てるためには、カスタマージャーニーの可視化が必須となります。
そこで、この記事では、BtoBカスタマージャーニーの基礎から、実践的なカスタマージャーニーマップの作成手順、可視化のポイント、よくある質問までを網羅的に解説します。
BtoBカスタマージャーニーとは?
BtoBカスタマージャーニーとは、企業が顧客となる企業に対して商品やサービスを販売する過程において、顧客がどのような経路をたどるのかを可視化したものです。
顧客が商品やサービスを認知してから購入、そして利用し続けるまでの行動や心理状態を時系列で捉えることで顧客理解を深め、効果的なマーケティング戦略を立案するのに役立ちます。
「BtoC」と比較して、「BtoB」のカスタマージャーニーは購買プロセスが複雑で、関係者が複数人関与することが多く、購買決定までの期間が長いという特徴があります。
そのため、各ステージにおける顧客のニーズを的確に捉え、適切な情報を提供することが重要になります。
BtoBカスタマージャーニーの構成要素
BtoBカスタマージャーニーは、一般的に以下の要素で構成されます。
要素 | 説明 |
ペルソナ | 顧客を具体的に想定した人物像。年齢、役職、部署、課題、目標などを設定します。 |
ステージ | 顧客が購買に至るまでの段階。認知、検討、決定、導入、維持といったステージに分けられます。 |
タッチポイント | 顧客が企業と接触する接点。Webサイト、メール、展示会、営業担当者との面談などがあります。 |
行動 | 各ステージにおいて顧客が取る行動。Webサイトの閲覧、資料請求、問い合わせ、デモ体験など。 |
思考/感情 | 各ステージにおける顧客の心理状態。どのような情報を探しているのか、何に悩んでいるのかなどを分析します。 |
BtoBカスタマージャーニーを理解するメリット
BtoBカスタマージャーニーを理解することで、以下のメリットが得られます。
- 顧客のニーズに合ったマーケティング施策の実施
- 営業活動の効率化
- 顧客満足度の向上
- LTV(顧客生涯価値)の向上
BtoBのカスタマージャーニーを可視化する重要性

BtoBビジネスにおいて、カスタマージャーニーを可視化する重要性はますます高まっています。なぜなら、顧客の行動や心理を深く理解することで効果的なマーケティング戦略を立案し、売上の向上につなげることができるからです。
可視化されていない状態では、顧客の真のニーズを捉えきれず、的外れな施策を行ってしまう可能性があります。可視化することによって、顧客との最適な接点を築き、良好な関係を構築することが期待できます。
例えば、Webサイトへのアクセス経路、資料請求、問い合わせ内容、商談履歴など、様々なデータを統合的に分析することで、顧客の興味関心や購買意欲を推測することができます。
これらの情報を基にパーソナライズされたコンテンツを提供したり、適切なタイミングで営業活動を行ったりすることで、成約率の向上につなげることが期待できます。
可視化によるメリット
カスタマージャーニーを可視化することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットは以下の通りです。
メリット | 詳細 |
顧客理解の深化 | 顧客の行動や心理を深く理解すること真のニーズを捉え、顧客中心のマーケティング戦略を立案できます。 |
効果的なマーケティング戦略の立案 | 各ステージに最適なコンテンツやオファーを提供することでリードナーチャリングを効率化し、コンバージョン率を向上させます。 |
営業活動の効率化 | 顧客の購買プロセスを把握し、適切なタイミングで営業活動を行うことで、成約率をアップさせます。 |
顧客満足度の向上 | 顧客体験を最適化して顧客ロイヤルティを高め、LTV(顧客生涯価値)の向上に役立てることができます。 |
問題点の早期発見と改善 | 顧客の離脱ポイントを特定し、改善を行うことで顧客の定着率を高めることができます。 |
カスタマージャーニーマップなどを作成し、顧客の行動を可視化して分析を行っていくことで、これらのメリットを得ることができます。カスタマージャーニーマップの作成方法は、後記いたします。
BtoBカスタマージャーニーの各ステージ
BtoBビジネスにおけるカスタマージャーニーは、一般的に以下の5つのステージに分類されます。各ステージにおける「顧客の行動や心理」を理解することで、効果的なマーケティング戦略を立案することができるようになるでしょう。
認知ステージ
顧客が自社の製品やサービスの存在と、それが解決できる課題を初めて認識するステージです。
この段階では、顧客はまだ具体的なニーズを明確に捉えていない場合が多く、情報収集も漠然としたものになります。
例えば、業務効率化の必要性を感じていたり、漠然とした課題意識を持っているものの、具体的な解決策を探し始める段階には至っていません。
そのため、Web検索やSNS、業界ニュースサイトなどを通じて、幅広い情報を収集する傾向にあります。
このステージでの企業の役割は、顧客の潜在的なニーズを喚起し、自社の製品やサービスが課題解決の糸口となることを伝えることです。SEO対策やコンテンツマーケティング、PR活動などが有効な手段となります。
検討ステージ
認知ステージを経て、具体的なニーズが明確化し、複数の製品やサービスを比較検討し始めるステージです。
顧客はWebサイトでの情報収集だけでなく、資料請求やウェビナー参加、デモ体験など、より具体的な情報に触れることで、各社の製品やサービスのメリット・デメリットを比較検討します。
このステージでは、顧客に自社の製品やサービスの優位性を理解させ、購買意欲を高めることが重要です。比較表や導入事例、顧客の声などを提供することで、顧客の意思決定を後押しすることができます。
決定ステージ
顧客が最終的な購入決定を行うステージです。
価格や契約条件、導入プロセスなどを最終確認し、どの製品・サービスを選択するかを決定します。
このステージでは、迅速かつ丁寧な対応が重要になります。問い合わせへの迅速な回答や契約手続きのスムーズな進行など、顧客の不安を解消し、安心して購入に進めるようサポートすることが求められます。
顧客価値要素を理解し、顧客にとって真に価値のある提案を行うことで、成約率を高めることができます。
導入ステージ
顧客が製品やサービスを導入し、使い始めるステージです。
スムーズな導入と初期の成功体験が、その後の顧客満足度に大きく影響します。
導入サポートやトレーニング、FAQの提供などを通じて、顧客がスムーズに製品やサービスを使いこなせるよう支援することが重要です。
また、定期的なフォローアップを行い、顧客の課題や疑問を解決することで、顧客との信頼関係を構築することができます。
維持ステージ
顧客が製品やサービスを継続的に利用するステージです。
ここでは、顧客ロイヤルティを高め、長期的な関係を構築することが重要となります。
定期的なコミュニケーションやアップセル・クロスセルの提案をしたり、カスタマーサポートの提供などを行ったりすることで、顧客満足度を維持・向上させる取り組みが求められます。
また、顧客からのフィードバックを収集し、製品やサービスの改善に役立てることも大切なポイントになります。継続的な顧客エンゲージメントを図り、LTV(顧客生涯価値)の向上につなげていきましょう。
【BtoBカスタマージャーニーの5つのステージ】

BtoBカスタマージャーニーマップの作成手順
BtoBビジネスにおいて、効果的なマーケティング戦略を立案するために重要になるのが、カスタマージャーニーマップを作成することです。顧客理解を深めるために、以下の手順で作成してみましょう。
ペルソナ設定
カスタマージャーニーマップを作成する最初のステップは「ペルソナ設定」です。ここで言うペルソナとは、単なる属性情報(年齢、性別、役職など)にとどまらず、顧客の抱える課題や意思決定に至るまでのプロセス、状況や行動パターンを“データに基づいて具体化したターゲット像”を指します。
年齢や職種といった基本情報に加え、企業規模、現在抱えている課題、ニーズ、意思決定の基準、価値観などを整理し、より現実味のあるカスタマージャーニーマップの作成につなげます。
また、顧客の多様な視点を捉えるために、複数のペルソナを設定することが効果的です。
例えば、あるWeb会議システムを導入する場合でも、IT部門の担当者と経営層では、重視するポイントや求める情報が異なります。それぞれに合わせたペルソナを設計することで、より精度の高いマーケティングアプローチができるようになります。
※ペルソナ設定について詳しく知りたい方は「ペルソナ設定の時代は終わった⁉︎今、マーケターがすべきこととは」をご覧ください。
カスタマージャーニーの各ステージ特定
ペルソナを設定したら、カスタマージャーニーの各ステージを特定します。一般的なBtoBカスタマージャーニーのステージとしては「認知」「検討」「決定」「導入」「維持」などが挙げられます。
それぞれのステージで顧客がどのような行動をとるのか、どのような情報に触れるのかを具体的に考えていくことが重要になります。自社のビジネスモデルや商材に合わせて、適切なステージを設定しましょう。
各ステージにおける顧客の行動、思考、感情の分析
各ステージを特定したら、それぞれのステージにおける「顧客の行動」「思考」「感情」を分析します。
顧客はどのような情報を求めているのか、どのような疑問や不安を抱えているのか、どのような意思決定プロセスを経て購入に至るのかを詳細に分析して顧客の行動を予測することで、適切な施策を打つことができます。
例えば、Web上での情報収集、資料請求、競合製品との比較検討、デモンストレーション参加、担当者との商談など、具体的な行動を想定し、それぞれの行動における顧客の思考や感情を分析してみましょう。
タッチポイントの明確化
顧客の行動、思考、感情を分析したら、それぞれのステージにおける「タッチポイントを明確化」します。
タッチポイントとは、顧客が企業と接触する接点のことです。Webサイト、ブログ、SNS、メールマガジン、広告、イベント、営業担当者との面談など、様々なタッチポイントが存在します。
それぞれのタッチポイントで顧客にどのような情報を提供し、どのような体験を提供するのかを設計することで、顧客との良好な関係を構築し、購買につなげることができます。
【タッチポイントの明確化】

課題と改善点の洗い出し
カスタマージャーニーマップを作成したら、現状の顧客体験における課題と改善点を洗い出します。改善すべきポイントを明確にするためには、顧客がどのステージで離脱しているのか、どのような不満を抱えているのかを分析します。
例えば、Webサイトの使い勝手が悪い、情報が不足している、問い合わせ対応が遅いなど、具体的な課題を特定し、改善策を検討します。
カスタマージャーニーマップは一度作成したら終わりではなく、定期的に見直して改善していくことが必要があります。
顧客の行動や市場の変化に合わせて、柔軟にアップデートしていくことで、より効果的なマーケティング活動につなげることができます。 顧客ロイヤルティを高めるためには、顧客体験の継続的な改善が不可欠といえます。
BtoBカスタマージャーニー可視化のポイント
BtoBカスタマージャーニーマップを作成したら、マップを最大限に活用し、顧客理解を深めていきましょう。ビジネスの成長につなげるためには、可視化のポイントを押さえることが重要です。ここでは、BtoBカスタマージャーニーの可視化のポイントをピックアップし、1つずつ解説します。
関係者間での共有と合意形成
カスタマージャーニーマップは、マーケティング部門だけでなく、営業、カスタマーサポート、製品開発など、顧客との接点を持つすべての部門で共有して活用することが重要です。
関係者間で顧客理解を深め、一貫した顧客体験を提供するために、マップの内容について合意形成を図りましょう。
社内Wikiやクラウドストレージなどを活用してマップを共有し、常に最新の状態を保つことが大切です。
定期的な見直しとアップデート
顧客の行動や市場の状況は常に変化しています。作成したカスタマージャーニーマップも定期的に見直し、必要に応じてアップデートする必要があります。
例えば、四半期ごと、あるいは年に一度、顧客データや市場動向を分析し、マップの内容を更新することで、顧客理解を最新の状態に保ち、効果的な施策を展開することができます。
具体的な顧客行動の変化に合わせて、ペルソナやタッチポイント、課題などを修正しましょう。
定量的なデータに基づいた分析
カスタマージャーニーマップは、顧客の行動や心理を視覚的に理解するためのツールですが、定性的な情報だけでなく、定量的なデータに基づいた分析も行うことも大切です。
Webサイトのアクセス状況、資料ダウンロード数、問い合わせ件数など、具体的な数値データを活用して顧客の行動を客観的に把握することで、改善点が明確になります。その際、アクセス解析ツールやCRMなどを活用し、顧客の行動をデータで裏付けましょう。
例えば、Google Analyticsを用いてWebサイト上の行動を分析したり、CRMで顧客の属性や購買履歴を分析することで、より深い顧客理解に繋げることができます。
※CRMツールの詳細は「マーケティングツールの種類一覧|目的別の比較表」をご覧ください。
具体的なアクションプランへの落とし込み
カスタマージャーニーマップを作成するだけでは、ビジネスの成果にはつながりません。マップで明らかになった課題や改善点を基に具体的なアクションプランを策定し、実行しなければ意味がありません。
例えば、顧客が情報収集に苦労しているポイントがあれば、Webサイトのコンテンツを改善したり、FAQページを充実させたりといった対策を講じることができます。各部門が連携し、顧客体験の向上につながる具体的な施策を実行していくことが大切です。
シンプルで分かりやすい表現
カスタマージャーニーマップは、関係者全員が理解し、活用できるものでなければ意味がありません。複雑な表現や専門用語は避け、シンプルで分かりやすい表現を心がけましょう。
視覚的に分かりやすい図や表を用いることで、顧客の行動や心理を直感的に理解することができます。
例えば、顧客の感情を絵文字で表現したり、色分けを活用したりすることで、マップの内容をより分かりやすく伝えることができます。
よくある質問
BtoBカスタマージャーニーについて、よくある質問にお答えします。
BtoBとBtoCのカスタマージャーニーの違いは?
BtoBとBtoCのカスタマージャーニーは、購買プロセスにおける意思決定の複雑さ、関係構築の重要性、購買サイクルの長さなどに違いがあります。
項目 | BtoB | BtoC |
意思決定 | 複数人が関与する複雑な意思決定 | 個人が比較的シンプルな意思決定 |
関係構築 | 長期的な関係構築が重要 | 短期的な取引が多い |
購買サイクル | 長い購買サイクル | 短い購買サイクル |
購入金額 | 高額な取引が多い | 少額な取引が多い |
情報収集 | 多様な情報源を活用し、慎重に情報収集 | 比較サイトや口コミなどを参考に情報収集 |
BtoBでは、企業のニーズを満たすソリューションを提供することが重要となるため、関係構築を重視し、長期的な視点でカスタマージャーニーを設計する必要があります。
一方で、BtoCでは、消費者の感情やニーズに訴求するマーケティングが重要となります。BtoCの購買プロセスは比較的短いため、迅速な対応と効果的なプロモーションが求められます。
カスタマージャーニーとパーソナライゼーションの違いは?
カスタマージャーニーは、顧客が認知から購入、利用に至るまでの行動プロセスを設計するものです。
一方、パーソナライゼーションは、そのジャーニー上で“個々の顧客に最適な情報や体験をリアルタイムで提供する”施策です。
【イメージ例】
・カスタマージャーニー →【道順(マップ)】 顧客がゴールに向かってどう進むかを設計するもの
・パーソナライゼーション →【道中の案内看板やサービス】 顧客一人ひとりに合わせて「次はこちらですよ!」や「この休憩所いかがですか?」と個別に出すもの
つまり、カスタマージャーニーが「全体設計図」を描くのに対し、パーソナライゼーションは「その場で顧客に合わせる「接客」」を行います。両者を連携させることで、より効果的な顧客体験の提供が可能になります。
※パーソナライゼーションについて詳しく知りたい方は「パーソナライゼーションの意味とは?事例から学ぶメリット・デメリット、実装方法」をご覧ください。
まとめ
この記事では、BtoBカスタマージャーニーの可視化とその重要性、具体的な作成手順、そして可視化のポイントを解説しました。
BtoBビジネスにおいて、顧客理解は成功への重要な鍵となります。顧客の行動や心理を深く理解することで、より効果的なマーケティング戦略を立案し、顧客との良好な関係を築くことができるのです。
BtoBビジネスの成功のためには、顧客中心の考え方であることが重要で、常に顧客のニーズを捉え続けることが不可欠です。カスタマージャーニーマップは、そのための強力なツールとなるでしょう。
ただし、カスタマージャーニーの可視化やデータに基づいた継続的な運用には、専門的な知識とリソースが必要です。 自社での取り組みに限界を感じている場合は、プロの力を借りることも一つの手です。
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